2005年02月10日 盗作とRespect(安倍なつみ ORANGE RANGE すかんち)

2005年2月7日、元モーニング娘。の安倍なつみが活動自粛からの復帰を発表した。

ネット上でファンからaikoや橘いずみらの作品と類似しているとの指摘を受け、安倍は写真集「ナッチ」など書籍3冊とラジオ番組のコーナーで作詞した作品での盗作を認め謝罪。2004年12月1日から活動自粛し、出演が決まっていた紅白歌合戦も辞退していた。

事務所は引退を視野に入れていたが、安倍の「中学時代から大好きな言葉やフレーズをノートに書き留めていたが、人のものと自分のものと区別がつかなくなってしまった」という意識的な盗作ではないとの主張を受け入れ、復帰を認めたという。

かたや、ネット上では別のグループに対する盗作疑惑も持ち上がっている。
ミクスチャー系と称され、「花」のヒットで知られる沖縄出身のバンド「オレンジレンジ」だ。

奇しくも安倍の辞退した紅白歌合戦に出場した彼らだが、「ロコローション」を紅白で歌った時、テロップの作詞・作曲がシングルCD発売時の「オレンジレンジ」から「Carole King、Gerry Goffin」に変わっていたという。
対象曲収録のアルバム「musiQ」でも作詞・作曲者の名前が修正されている。
メンバーはインタビューで以下の発言をしている。
「たとえばこのメンバーの中に、本物の、めちゃくちゃロックが好きな人はいないんですよ。『ロックに詳しいぜ』とか、『ファンクに詳しいぜ』とか、そういう人は1人もいないから、自然にそうなってます。もともと音楽はあとからついてきたバンドだから、みんな手探りで、『じゃあ、これとこれとこれを足そう』とかやってる。とりあえず全部に触れておいて、参考にできるものは全部参考にしようと。オレたちの中の合言葉は『パクろうぜ!』です(笑)。まずはカヴァーするんですよ。で、ここをわかんないようにしようとか、ここ使ったらバレるだろ、とか話し合う(笑)」

さてこの両者、音楽への愛情、敬意を感じるのはどちらだろう。
「大好きな言葉やフレーズをノートに書き留めていた」安倍に原曲への愛情を感じる。
他方オレンジレンジは本人が「ロックが好きな人はいない」と言っているように単なるコラージュの「元ネタ」としてしか感じられず、音楽への愛情が全く見えない。なにしろ「音楽はあとからついてきたバンド」といっているくらいだ。

1990年代前半に活躍したローリー寺西(現ROLLY)率いる「すかんち」というバンドがあった。クイーンやレッドツェッペリンからの影響を受けていると誰が見ても感じるルックス、音楽でローリー寺西の奏でるギターからは時々彼らのフレーズが出てきたりする。
これも「コラージュ」といえるかもしれないが、彼らの中でそれらの音楽が「大好き」で何度も何度も聞いていくうちに自身の中で完全に消化され、そこから自然にあふれ出ていることは感じられた。好きな音楽だから自然に奏でるとそれが湧き出てくる。もちろんギターのリフは類似しているがそこに乗るメロディーはオリジナル以外の何者でもない。

アイドルはイメージが大事だから安倍はネット上のうわさに即座に対応し活動を自粛したのかも知れないが、かたやオレンジレンジは2005年2月の時点ではだんまりを決め込んでいる。

皮肉にも安倍のほうに「いさぎよさ」、ある種の「男らしさ」を感じずにはいられない。